極限までずぼら

最近は肌断食中(○回目(!?))失敗を乗り越えて行きたいところ

『かぐや姫の物語』壊された心と姫の死

先日金曜ロードショーで放送された『かぐや姫の物語』に衝撃を受けた。

姫が月へ帰るまでのこのストーリーは原作に忠実なのに、私はかぐや姫の死を感じ取り苦しくなった。

鳥、虫、けもの 草、木、花。

それらのように生きたかったのに、還っていった。

還るしかなかった。

色のない月へ。

感情のない死の故郷へ。

 

終盤、女官に衣を着せられた瞬間、姫は突如感情を失う。

その間際に、女童たちの歌でわれに返り、悲しみや苦しみをも美しいといった姫。

事切れる直前の走馬灯のようなものか。

でも、死のベールがかけられるのは、現実でだって突然である。

私は、彼女は死んだのだと思った。

 

地上に憧れ、翁のもとで育った。

いつの間にか生きたかった場所を離れた。反抗した。

けれど、ある時から人生の冬を耐え、春を待つようになった。

その結末は。

 

御門に抱きしめられたときの顔は、女性は特に共感できるのではないだろうか。

その後、おびえる様子もなく毅然とする姿、しかし彼が去ると震えだす姿も。

御門の外見や地位は関係ない。いわゆる、「普通に無理」だが、「そうするしかない」。

彼女は結婚はしたくない。

でも、ととさまとかかさまのことは想っている。

御門を断ったら、二人はどうなるのか、考えないわけもない。

だけど・・・・。

この時点で、彼女はもう限界だと思うのだ。

彼女はそれから、月を見上げるようになる。姫の心は壊れてしまったのだ。

 

その後、捨丸にいちゃんと再開した時。

彼は妻子のある身ながら、姫の訴えに、逃げようと返した。

美しく育った幼馴染。彼の生きてきた人生。

個人的には、妻子のことを言わずに、彼女とそういうことをしてしまった捨丸には賛成できない。

が、彼の気持ちを思うとかぐや姫にそう言ってしまうのもわかる気がした。

そして。

姫がいなくなったあと、夢か・・と何事もなかったように現実に戻っていく。

姫が月へ戻ったあとも、穏やかに月を見つめている。

このあたりも個人的には捨丸どうなんだい?とは思ってしまうが。

それから、「捨丸にいちゃんとなら、幸せになれたかもしれない」

かぐや姫はそういったが、本当にそうなのだろうか。

「なんてことない。生きている実感があれば。」

仮に捨丸と一緒にいままで生きていたら、思えるのであろうか。

その暮らしが、生きている実感があるものといえるのであろうか?

彼女は現在の環境で生きている実感を得られなかったのかもしれない。

だから、彼の、泥棒まがいのことをもしなければならない暮らしをそのように言えたのかも知れない。

何が、どういう生き方が幸せなのか。

かぐや姫。本当に彼女は、彼となら幸せになれたのか?

 

この作品の男性たちは、あまり良く思われていないようだ。

それもそのはず。

翁は姫のことを大切に思うが、ゆえに、「自分が思う姫の幸せ」を押し付けている。

求婚者たちは、自分のステータスが欲しいがため、かぐや姫に近づく。

姫をはっとさせるような言葉をつむいだ石作皇子も、結局は女を口説いては捨てるような人間だった。そんな彼に心動かされてしまったということに悔しさや悲しみを覚えた

ような、かぐや姫の泣き姿が忘れられない。

この作品の男性は、姫(女性)への態度が、なにかと妙にリアルだと感じてしまう。

御門も、捨丸も。先述のとおりだからだ。

 

人として生きたかった彼女は、人らしく生きる権利を剥奪された。

そして、「女」として生きることを強要された。

美しさ。作法。結婚。

生き方を強要されているのは、彼女だけではないのかもしれないが。

身分があるならそれに縛られそう生きるしか、そう振舞うしかないのかもしれない・・・

そうして、縛られた人々は、人を縛るし、また他の縛られた人を生む。

かぐや姫のあこがれた地上は、まさにがんじがらめだ。

そんな世界は確かに、月の住人からしたら汚れているように見えるだろう。

女官がかぐや姫の言葉を聞かず衣をかけてしまうのだって、

苦しみ、悲しみといった無駄な感情をかかえてしまっているかぐや姫を早くどうにかしてあげようということでないのか?

わからない者たちにとっては、当然のように、感情は疾患だ。

 

かぐや姫の月への帰還は、自殺と理解している。

人として生きることが出来ず、御門に抱きすくめられたときに

もう彼女は死にたいと思ってしまったのではないだろうか。

鬱になってしまったら、無意識に自殺しようとしてしまう人もいるというし、

月の迎えが来た際に、彼女がスーッと迎えのもとに引っ張られていくのはそういうことなのでは?と解釈した。

 

映像表現の美しさがあるだけではない、心を締め付けるような作品だった。

地上の民も月の民も、かぐや姫も、誰も悪くなかったと思うのに。

かぐや姫は月に還り、涙を流すのだろうか。